コラムTanuma Animal Hospital

コラム

老齢犬介護時のお食事の工夫

今回は老齢介護の中からいくつか飼い主様にもして頂ける「食事の工夫」についてお伝えいたします!(^^)介護のついてのお話はとても長くなってしまう為、今回は割愛させて頂きますが、院内にも資料をいくつかご用意しておりますのでそちらの方も是非ご参考にして下さい!何かご相談などがございましたらいつでもお声かけください。

 

*食事管理について*

 

わんちゃんは7歳になると老齢犬の枠に入るので、シニアフードへの切り替えが必要だとよく言われています。けれども、実際に基礎代謝量が大きく減り始めるのは、種類や生活環境により違いはあっても、ほとんどの子は10歳を超えたくらいからです。
ですので、食事の切り替えは、7歳からが老齢期を迎える準備期間と考えて、10歳以降からの本当の老齢生活に備えていくことが大切です。

 

ねこちゃんはわんちゃんよりも好き嫌いが激しく、食べ慣れたフード以外を拒む傾向にあります。お腹が減っていても何でも食べる、というタイプの子もあまり多くないため、対策として、ネコちゃんがフードの選り好みをする習慣をなるべつくらないように「フードのローテーション」をするとよいでしょう!

ねこちゃんが小さい頃から、フードの購入は“小袋単位で複数の銘柄”にするようにしましょう。1袋食べ終えたら別の銘柄のフードを与えるようにして、これを繰り返していきます。
好き嫌いができるだけなくなれば、老齢期になってフードの銘柄を切り替える時や療法食にするときも容易に切り替えをすることができます!

 

 

次はフードの嗜好性(動物が好んで食べる指標)を上げる方法についてお話いたします!

 

・フードの水分含有量を増やしてみる
ドライフードよりも缶詰やパウチタイプの方が脂肪やたんぱく質含有量が多いため、好んで食べてくれることがあります。
ちなみに、ドライフードを缶詰と同じ水分量にするには、ドライフード1に対して水を2.5の割合で混ぜる必要があります!

 

・脂肪を増やす
脂肪の量を増やすと少ない量で必要なエネルギー量を満たすことができます。
ただし、脂肪の量を多すると、食事が腸などを通過する時間が長くなってしまう為、元々腸の機能が低下気味の子はこの方法は注意しなければいけません。

 

・甘みを追加してみる
わんちゃんは甘いものが好きな子が多いため、フードに砂糖やシロップをかけてみるのも1つの方法です。ただし、今まで甘いものを食べたことがない子の場合は、味見をさせてからの方がいいでしょう。ここで大切なのは、高カロリー食などを与えているわんちゃんの場合、過剰にこれらを追加してしまうと高血糖状態になってしまうこともあるため注意が必要です。
ちなみにねこちゃんはあまり甘みを感じないと言われています。

 

・温める
人と同じように、わんちゃんやねこちゃんも食事は冷めているものよりも温かいものの方が美味しく感じる傾向があります。
これは、フードを温めることで発生する香りが、わんちゃんやねこちゃんの嗅覚を刺激するためだと言われています。これは缶詰だけでなくドライフードも同様です!また、開封したての缶詰やドライフードなども食欲を増す効果があります。

 

老齢期のわんちゃん・ねこちゃんは飲水量や身体の水分調節機能などが低下することで脱水傾向になります。わんちゃんの場合、特に寝たきりで自発的に水が飲めないような子が、脱水症状を起こしています。ねこちゃんの場合は、腎不全を起こしてしまう為さらに脱水が進んでしまいます。

寝たきりの子の場合、血行が悪化してしまうことで床ずれができやすくなってしまうことがある為、普段から飲水量には十分な注意が必要です。自発的に飲めない子の場合は水を注射器などで与える必要があります。一気に飲ませず、口の中にちょっとたまったら少し休む、というのを繰り返して飲ませていきます。

 

 

*状態別の食事の与えかたについて*

 

足腰は弱っているけれど、自力で立ったりすることができる子の場合は、なるべく痛みがでない体勢で行うようにしましょう!

頭を下げて下を向かなくても食べられるように、前肢に体重がかからないように食器や水の器を高めの位置においてあげるようにしましょう。

支えなどがあれば立ったり歩いたりすることができる場合の子は、お食事は「おすわり」の体勢であげるようにしましょう!また、前脚は踏ん張ることができてもお尻が後ろにずれてきてしまう子もいます。どうしても前肢だけで身体を支えることが出来ない場合、食器を顔の前に持っていき、「ふせ」の状態で食べさせましょう。

支えがあっても立てず、寝たきりの子の場合は食べさせるときは必ず上体を起こして食べさせるようにしましょう。飲水のときも同様です。

 

寝たままの状態で食べさせると、起きて食べた時よりも誤嚥(水や食物を誤って器官に吸い込むこと)を起こしやすくなってしまいます。
食事中にずっと首などを支え続けるのが大変な場合は、飼い主様がしゃがんで膝の上に乗せたり、座椅子などで上体をささえたりしても良いでしょう!

最後に水を飲ませることで食道の中に食べ物が残ってしまっていても、胃の中まで流し込むことができます。また、口の中の洗浄にもつながります!
洗浄瓶などを使うと楽にのませることができますよ(^^)

 

上手く飲めずに口から流れおちてしまう場合は、口の下にトレーなどをあてて、落ちた水の量をチェックします。1日にどのくらい水分を摂取しているのか把握しておくことはとても重要です!

食事後も「逆流性食道炎」などの防止のために上体を高くしておきましょう。また、これは食後だけでなく、寝ている時も必要です。
胃液が喉のあたりまで逆流して咳が止まらなくなってしまうこともある為、普通に寝ているだけで誤嚥を起こしてしまうという事態を回避する為にも体勢はとても重要になります!

 

 

今回いくつか食事についての工夫のポイントや注意して頂きたい点についてお話いたしましたが、食事を食べさせる前に、まず環境や体調も異常はないか、快適に過ごせる環境になっているのか、身体の中の異常はないか、口の痛みなどはないかなど。食事を食べなくなってきた原因についても考える必要があります。もし、体調の問題で食欲がないようであれば、長く様子を見ることはせず、気になる症状があればすぐに獣医師に相談しましょう。

 

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