結膜フラップ形成術
結膜フラップ形成術(結膜皮弁法)は、結膜組織を用いて皮弁を作成し、結膜に発生した潰瘍部分を覆う手術です。
内科療法に反応せず慢性化した難治性の角膜潰瘍・進行性の角膜潰瘍・深部角膜潰瘍・デスメ膜瘤を起こし、穿孔の恐れのある角膜潰瘍などで選択されます。
この手術の目的は潰瘍の治癒であり、角膜の透明度を回復するものではありません。術後ある程度の角膜の濁りが残る可能性があります。
角膜は4層構造で形成されています。表面から角膜上皮・角膜固有層・デスメ膜・角膜内皮となります。 通常角膜上皮傷が欠損(傷が入る)すると、周囲の角膜上皮が欠損部分に入り込んできてその部分を覆い、さらに活性化し修復されます。正常な角膜膜損傷の治癒過程が阻害されると、角膜固有層の融解が起こり、 あらゆる状態の角膜潰瘍が形成されます。このような状態になった場合は、内科療法では対応できない場合が多くなります。
結膜フラップ形成術で重要なポイントとして、血流を確保する事・皮弁の退縮を防ぐことが上げられます。 そのため、皮弁形成時にはその大きさ・厚み・形成の場所に注意を払う必要があります。
またフラップ形成時には、潰瘍部分の処置も必要となります。 不良な角膜上皮と、融解を起こしている角膜固有層はフラップ設置前に除去しておく必要があります。
結膜フラップ形成術にはいくつか方法があり、潰瘍の大きさ・位置などによって選択されますが、当院でよく行われる方法は茎状結膜皮弁法です。
状態によりほかの術式を併用する場合もあります。術後管理としてエリザベスカラーの装着・抗生物質内服・点眼を継続します。通常6週間程度で皮弁は定着し、安定化されます。
眼瞼腫瘍
眼瞼腫瘍の約90%は良性で生命に危険を及ぼすことは稀です。しかし切除範囲が狭いと再発する恐れがあります。残り10%程度が悪性腫瘍になりますが、転移などを起こす事はほとんどありません。
高齢の犬に発生する事が多く、シーズー・シェルティー・コッカースパニエルなどに好発します。
手術の方法は腫瘍の大きさによって選択されます。
当院では腫瘍が小さい時期の手術をお勧めしており、その方法のほとんどはV字切除術を行います。
眼球摘出および義眼挿入
【眼球摘出術】
<適応条件>
・末期の緑内障で視覚を失い、眼球が拡張したもの(牛眼となった目)
・複数の外眼筋及び視神経切断を伴う眼球突出
・眼球にも炎症が波及した重度な眼窩膿瘍で予後不良なもの
・広範囲な眼球の外傷で予後不良なもの
などが挙げられます。
いずれも目を残す治療が難しく、本人も痛みを伴っていることが多いです。
<外科手術>
眼球摘出は、眼球とその周辺組織すべてを摘出する手術で、眼球のほか、眼球結膜、眼瞼結膜、眼瞼緑、瞬膜などを摘出します。
眼瞼経結膜法と経眼瞼法の2つのアプローチ方法があり,症例や術者の判断により選択されます。
経結膜法では結膜, 涙腺,瞬膜組織を一時的に術野に残し,摘出後にこれらの組織を切除します。
経眼瞼法では、結膜, 瞬膜を包括して切除していきます。
【義眼】
眼球の切除を行うと、眼窩部皮下が陥凹するため、顔の形が大きく変わってしまいます。
顔の見た目を極力変えないよう、義眼を入れるという方法があります。切除した眼球の代わりにシリコンでできた玉を入れます。そうすることによって違和感を減らすことができ、美容にもつながります。
<方法>
摘出した眼球のところに同じ大きさの義眼を入れ縫合していきます。
<合併症>
まれに義眼を入れることによって眼窩シスト形成を起こす場合があります。
<術後管理>
かたい素材のエリザベスカラーを装着し、抗生剤を投与しながら傷口の様子を見ていきます。
チェリーアイ
チェリーアイは瞬膜疾患の中で最も頻繁に起こる疾患です。
原因は先天的なものが多く、ビーグル・ブルドッグ・コッカースパニエル・ペキニーズなどでよく見られます。
治療せずに置いておくと、慢性の結膜炎を引き起こします。基本的に内科療法には反応せず、外科的治療が第1選択となります。
当院ではポケット法と言われる術式でチェリーアイの整復を行います。